建墓の要目
●建墓の要目
先祖への追善供養は、先祖へのものであると同時に生者のものでもある。
墓とは生の帰結であると同時に、永遠の世界への参入であるという意味において生と死を結ぶ紐帯に他ならない。
言い換えれば我々の『生』の中には先祖の血が躍動し、我々の『死』は子孫によって永遠に継承されて行くのである。
このように墓を永遠の生命の感得の場であると考えれば、今日あることを先祖のお陰と感謝し、やがて寿命が尽きればそこに自らが帰入し、子孫に伝えていく安らぎの場であるという、報恩の気持ちで墓を建てれば良い事になる。
墓に吉相・凶相が有るわけでなく、墓を通して永遠の生命を感得する場にふさわしい墓を建て、かつ供養を怠らないことが建墓の要目である。
謹写
●ご先祖様
日本人には、元来先祖とともに暮らしているという意識がある。
『ご先祖様に申し訳が立たない』という言葉にみるように、日本人は祖先のまなざしに見守られ、見届けられているという思いの中で人生観や倫理観を形成してきた。
ここには、前の世代への感謝の気持ちと、それに見合う生き方をしているかという畏れの念がある。
墓前で手を合わせて拝む。その、しんとした静かな時間は自らを見つめ、かつて身近な存在だった人々との語らいの時であろう。
ふだんの生き方を振り返り、心を正すとき不思議に『しっかり生きろ』と励まされているような気がする。
謹写